硝子体手術
硝子体出血、黄斑浮腫(むくみ)、黄斑円孔、黄斑上膜、増殖性硝子体網膜症、網膜剥離などに行います。手術時間は硝子体出血、黄斑前膜、黄斑円孔で大体10分から20分です。
一般的な20ゲージシステム以外に25ゲージシステムによる小切開硝子体手術も疾患により使い分けてやっております。
また、当院では内視鏡による硝子体手術を行っており通常のやり方では手術のできない症例にも適応を広げ、また、実際に見て行うので手術の精度を高めております。
また、23ゲージシステムによる内視鏡手術も始め手術時間を短縮しております。
硝子体手術とは
硝子体とは目の中にある透明なゼリー状組織です。
この硝子体が網膜を牽引したり、炎症を起こしたり、濁りや出血により網膜への光を妨げたりすることがあります。牽引や濁り、出血を除去するために手術を行います。
この手術のことを硝子体手術といいます。
主な適応疾患は、糖尿病網膜症、網膜剥離、黄斑上膜、網膜静脈閉塞(へいそく)症、硝子体混濁などです。
当法人では、従来の硝子体手術や今流行の小切開手術の他、内視鏡手術によりさらにきめ細やかな手術を行っております。
内視鏡を用いた網膜硝子体手術
関東信越9県で東飯能眼科が3番目、おおのはら眼科が7番目に厚生労働省特掲診療認定施設となりました。
私はこの手術を2008年より行っております。
この手術の特徴としては
- 角膜混濁などで顕微鏡下手術が不可能でも網膜硝子体手術が可能である。
- 病変の近方で強拡大で手術を行う事ができる。
よって、手術時間を短縮できる等があります。
もちろん、最近流行のワイドビューシステム、シャンデリア照明等も状況に応じて採用してます。
私の手術時間は硝子体出血、黄斑前膜、黄斑円孔等で大体10分から20分です。
網膜剥離や増殖膜切除はケース・バイ・ケースですが、最大で1時間半でしょうか。
黄斑円孔手術
ある程度の大きさまではinvert法として内境界膜や前膜にて閉鎖を目指しますが、それ以上は網膜移動術にて対応します。
網膜剥離手術
当院では網膜剥離手術を行っておりますが、その特徴について説明いたします。
まず、網膜剥離の発生についてですが網膜周辺の変性などがあると、高齢者では硝子体が液化してるので、変性部位に裂孔が生じるとそこより液化した硝子体が網膜下に侵入し網膜が剥がれます。
そして、それが黄斑に及ぶと視力を失います。そして、黄斑が剥がれた時間が長いと後で手術にて元に戻しても視力は回復しません。原因として、他に外傷やアトピー、また、糖尿病性網膜症等での増殖膜等による牽引によっても起きます。
若い人は硝子体がまだ液化してないので進行は遅いですが、同様です。治療法としては原則的には若い人には強膜内陥術を行い、中年以上では硝子体手術を行います。理由は専門書に任せます。
当院では内陥術にも内視鏡を用いクライオによる裂孔の閉塞(へいそく)の確認を行っております。硝子体手術も同様に内視鏡にて行っております。
網膜剥離の手術法としては以下の方法があります
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気腹法 SF6ガスおよびCSF8ガスを硝子体内に注入することにより復位させます。
原因裂孔が上方であればこれで十分復位可能です。 - バックリングを用いた網膜復位術 若年者で周辺網膜変性を原因とする網膜剥離の手術の定番です。
- 硝子体手術 50歳以上はこの方法を用います。
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バックリングを用いない網膜復位術。強膜内陥術は近視化し、シリコンオイル注入で遠視化します。
であれば、復位し原因裂孔を閉鎖すれば、この方法が最も生理的と考えます。
以上の特徴を踏まえてそれぞれの患者さまにより適した方法を選択しております。
- 手術時間はどのくらいかかりますか?
- 20分から1時間ですが2時間ほどかかる場合もあります。ただし、当院では内視鏡による硝子体手術を行っているのでそんな短時間の手術でも硝子体をほぼ完全に除去しております。内視鏡以外でも25ゲージシステムや23ゲージシステムといった小切開硝子体手術では黄斑上膜などは短時間で手術が可能ですが、硝子体をほとんど残すので術後の医原性網膜裂孔や医原性網膜剥離の報告があり100例に1例との報告もあります。内視鏡手術では短時間ではありますがそのような危険はありません。
- 目がかすみ、視力が低下してしまいましたが手術を行わないといけないのですか?
- 原因はさまざまですが、網膜や脈絡膜に炎症が起こり血管から炎症性細胞やたんぱく質が硝子体に侵入してしまいます。これによって硝子体が混濁し、飛蚊(ひぶん)症や目のかすみや視力低下が起こります。最初は目薬や飲み薬により混濁を抑える治療が行われますが、軽減されず網膜剥離などを併発したときには硝子体手術が必要になります。
- 手術を行わないと悪化するのですか?
- 症例によりますが、仮に網膜剥離を起こしている場合はできるだけ早く硝子体内の出血を除去し、剥離した網膜を元に戻さなければなりません。放置すると失明に至りますので、早めにご相談ください。
- 硝子体手術で黄斑浮腫(むくみ)は治りますか?
- 黄斑浮腫(むくみ)は糖尿病性網膜症、網膜静脈閉塞(へいそく)、ぶどう膜炎などで起きます。硝子体手術を行った場合5割以上に視力の向上が認められることが学会等で報告されてます。また当院ではアバスチンとケナコルトの硝子体腔(たいこう)注を追加しており、さらに成績をたかめております。
- 糖尿病性網膜症でレーザー光凝固で視力はよくなりますか。また、逆に悪くなりませんか。
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単純性か前増殖性または増殖性かで異なります。
単純性で慢性浮腫(むくみ)の場合はよくなる事が多いです。ただし、単純性でもその程度にもよりますが嚢胞性黄斑浮腫(むくみ)のある場合は難しいです。
以前これに対し格子状光凝固をやった時代もありましたが、ほとんど効果なく最近はほとんど見かけません。
前増殖性および増殖性の場合は光凝固を行う意味合いが違います。この場合は血流の少ない場所に光凝固を行うか、または、全体に行うことにより網膜全体の酸素需要量を減らすなどして新生血管の発生を防ぐまたは退出させるために行うのです。
新生血管は硝子体出血をおこし増殖膜ひいては牽引性網膜剥離の原因となります。よって、この場合の光凝固は視力をよくするというより網膜症の進行防止のため行います。
この場合、少ない可能性で光凝固が黄斑浮腫(むくみ)の原因となり視力低下を起こす事もありますが病気全体を考えれば仕方がないと思います。
そして、同時にあるいは、病勢がある程度収まったところで黄斑浮腫(むくみ)の治療を行えば良いのです。
現在は黄斑浮腫(むくみ)の治療として硝子体手術、ケナコルト、アバスチンの硝子体内注等いろいろあります。
- 近視性黄斑症について、治療法はありますか?
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昔は無かったのですが、現在はあります。
ひとつは(1)滞留型ステロイドをテノン嚢下いれることと、もうひとつは(2)アバスチンの硝子体内注入です。
(1)は、どちらかというとこれ以上症状を進行させないという意味合いですが、(2)は視力上昇を狙ったものです。
近視性黄斑症は強度近視により網膜・脈絡膜変性が起こり、脈絡膜新生血管が発生し、後に瘢痕(はんこん)化し、視力が下がる病気です。
これに対し、アバスチンが新生血管を退縮させて治すというものです。
瘢痕(はんこん)化したものには、効果がないと言われていますが、瘢痕(はんこん)化したものにも効果がかなり見られる例を多数経験しております。